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2007年1月16日 (火)

藤村美葉の場合

渋谷区富ヶ谷の三橋歌織の夫殺し報道に接して、
おそらく心理的に対極にあると思われる、別の
殺人事件を思い出している。

 その昔、私は世田谷区八幡山の大宅文庫で
その事件の詳細資料を入手した後、現場である
練馬区石神井に、藤村美葉のアパートを訪ねた。
それはごく普通の白いアパートであり、殺人
現場と意識して訪れない限り、気にも止めずに
通り過ぎたに違いない。その普通さは逆に、
殺人という行為がいかに人間の内面で起こる事
なのかを実感させられた。
 彼女の部屋は道路に面した1階角。六畳とバス・
トイレにキッチン。六畳の部屋にダブルベッドを
置いていた。彼女は事件当時23歳。殺される
恋人は27歳。高校時代から交際5年目だった。
「今日の体調は、私より彼のほうがよく知っていた」
と言うほど、密接な関係だった。だが大学の演劇部
で彼女がキスシーンを演じ、彼が嫉妬した頃から
関係に亀裂が生じ始める。
「息苦しい」という思いは、別れ話に発展する。
 彼を逃れて引っ越したはずの現場アパートで、
彼女はいつの間にか復縁していた。別れて自由に
なりたいという思いと、愛されたいという思いの
葛藤に悩んだ末、彼女は彼を殺してしまおうと
思うに至る。
 犯行当日、彼女は手作りの夕食で彼をもてなし、
酒を勧め深酔いさせる。深夜、かねて用意していた
ロープで首を絞めて殺害したのだった。非力な女性が
男を殺す場合、男が眠っている所を襲うのが定石で
ある。比較的無抵抗のまま殺す事が出来る。
 ドラマでは5秒程絞め殺す場面が映され、あとは
死体になるが、実際には渾身の力で1分から1分半
くらいは絞めなければならない。30秒程度だと、
仮死状態から蘇生する可能性が高い。死というもの
を「心臓と呼吸の永久停止」と定義すると、絞首刑で
死を確定するまでには10分以上かかる。そしてその
間、大小便の失禁など、生々しい事態に遭遇する。

 彼女は彼の遺体を六畳間の床下に埋めて隠した。
しかし遺体は生ものである。腐乱して強烈な腐乱臭が
発生する。それによって事件が発覚するわけだ。
その間、約半年の間、彼女は彼の遺体+腐乱臭と共に
暮らすわけだ。心理学者によると、愛する者であれば
気持ち悪いとは思わないそうだ。この点、一刻も早く
死体を処分したかった三橋歌織とは著しく異なる。
 事実彼女は、警察の取り調べに対して
「愛する人を殺してしまった・・・なぜ?」と自問自答
している。

 アパートを後にして石神井駅に向かって歩いた私は、
途中、公園前に電話ボックスを見かけた。
「ああ、あれか・・・」と思った。
彼女は彼以外、あまり友達がいなかった。一人の夜、
誰か人の声が聞きたくて、電話ボックスに入り、気象
通報を聞きながら泣いていた事もあったという。

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